危険負担についてはこうやって覚えましょう

『危険負担』についてまとめて欲しい」とのリクエストを頂きましたのでお応えしたいと思います。

まず危険負担を覚えるとき、いきなり「債権者主義」「債務者主義」という言葉から入らない方がいいと思います。

なぜかというと、「どちらがどちらの場合か」混乱してしまいがちだからです。(文字も言葉も似ていますしね)

それよりもまず、危険負担とはどういうものなのかを頭の中でイメージできるようになることが大切です。それを掴んでから、用語を当てはめていきましょう。

 

危険負担とは何か?

では危険負担とは何かを一言でいいますと

特定物を購入した買主は、不可抗力でそれが引渡しできなくなった場合でもお金を払わないといけない

ということを言います。

キーワードは「特定物」「不可抗力(売主の責めに帰すことのできない事由)」「引渡しできなくなった」「買主はそれでもお金を支払う」です。

損ですね!

そうなんです、「危険負担」とは、債権者と債務者のどちらも悪くないのに、目的が達成できなくなった場合に、どちらが損を被るか、という取り決めなのです。

そして「特定物」の場合は、買主が損を被ることになっているのです。

(※特約で売主の負担にすることは可能です)

 

特定物とは何か?

ではその不幸な買主が買ってしまった「特定物」とは何でしょうか?

これは「物の個性」に着目して取引されたものをいいます。
特定の建物や特定の品物など、唯一の個性を持っていて他に替えられないものを意味します。
その反対は「不特定物」であり、いくらでも替えがきくものです。

特定物とは、「個性を持った物」

 

例えばユニクロのTシャツを考えてみましょう。
それ自体はたくさん売られている量産品ですから「不特定物」です。

しかし例えばこのTシャツのうちの1枚をマイケル・ジャクソンがコンサートで着たとします。
するとそのTシャツは「マイケルがコンサートで着たTシャツ!」ということで、「特定物」となります。
他に替えられない個性が生まれたからですね。

「中古品」は「特定物」となる

 

買主「そのマイケルのTシャツを売ってくれ!100万円払う!」
売主「分かりました。明日引渡します」(※売買契約成立⇒所有権が買主に移転

ところがその夜、売主がTシャツを倉庫に保管していたところ、倉庫に雷が落ちて発火し、Tシャツが滅失してしまいました。(※不可抗力)

売主「すみません、Tシャツは燃えてなくなってしまったのでお渡しできません」
買主「なんだって!それは残念すぎる!」
売主「でも100万円は払ってください。所有権は移転してますので」
買主「大ショック!!スムースクリミナル!!」

・・といった感じです。(すみませんちょっとふざけました)

という形で、特定物の場合は買主が負担することになるわけです。
そして買主というのは、この取引において「物を引き渡せ」という債権を持っている側です。
つまり債権者側が負担するので、これを「債者主義」というわけです。

買主側が負担することを「債権者主義」という

分からなくなったら、こんな風にイメージしましょう↓↓
債権者=偉い。取引で偉いのは買主の方。だから買主=債権者。

 

不特定物の場合は?

不特定物の場合は、逆に売主が負担することになります。
つまり「債務者主義」です。(物の引渡し債務を負っている側、ということ)

買主が「このタイプのユニクロのTシャツをください」という注文をした場合、これは種類で注文しただけなので「不特定物」です。(こうした場合の債権を「種類債権」と呼びます)

売主は、もし倉庫にあるTシャツが焼けてしまっても、替えを用意することはできるので、もう一度調達する義務が発生します。これを「調達義務」といいます。

ところがです。
いくら替えが存在するからといって、市場にその商品がある限り調達義務を負うというのでは、売主に酷すぎます。

そのため、「不特定物」であっても、一定の行為が行われた場合は、「特定された」として、買主負担とすることにしたのです。

それはどのような場合かというと

民法401条
債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

上記の通り、
債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了したとき または
債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したとき
に「特定物」となり、債権者(買主)の負担に切り替わります。
このあたりは記述問題にしやすそうなので、こちらの練習問題を解いておいてくださいね。

練習問題19(民法)
【問題】 Aは、Bから特定の種類のビールを1ケース買う契約をした。 この場合、Aは目的物を種類のみで指定しており、これは「種類債権」と呼ばれる。 種類債権においては、「特定前」に商品が滅失した場合はBは同種のものを調達する義務を負...

 

売主が負う義務について

さて、最後にもう一つだけ知識を追加しておきましょう。
それは売主が負う義務についてです。

上記の「不特定物が特定された場合」ですが、その時点で債権者(買主)負担になるとお伝えしました。
これはどういうことかというと、同時に所有権が買主に移転したことを意味します。

すると、売主は、買主のものを預かっていることになります。
この場合、売主は「善管注意義務」を負うことになります。
つまり、「もう自分の物じゃないんだから、自分の物以上に注意して管理しなさい」という義務です。

不特定物の段階で負う義務は「調達義務」です。
特定物になった段階で負う義務は「善管注意義務」です。

このように義務が変わることも覚えておきましょう。

 

<追記>

停止条件付きの危険負担についてはこちらをご覧ください。

停止条件付き契約の「危険負担」
以前「危険負担」の投稿をした際に触れていなかった部分があったので追記します。 それは、「停止条件付きの双務契約」だった場合です。 「停止条件」というのは、将来、条件が成就したら効力が発生するというものです。 例...

コメント

  1. なみ より:

    早速のまとめ記事ありがとうございます!!とっても分かりやすいです!
    試験まであと残り17日、いままでの記事もしっかり見直して頑張ろうと思います(*^^*)